ブルービースト


「こっち、見てください」



ユノがはっきり言えば、ブロードは肩を震わせた。


それでも上げない。




──…顔を、上げない。




「ブロード?」



アサギが怪訝そうに名を呼ぶと、ブロードはやっと顔を上げた。


しかし、開いた右目はどこも捉えない。


キョロキョロして、やがて下を向いて、また顔も下がってしまった。




「おい?」



明らかにおかしいその様子に、アサギは焦燥感を覚える。



右目。…右。




確か、彼は右側の動きが──…






「駄目なんです」



愕然とする大将に気付いているのかいないのか、ブロードは観念したように言う。


座り直し胡座をかいた彼は、困ったように俯きながらも笑った。



開かれた唇が、動く。






「…右目、見えないんだ」












「「……え…?」」




アサギとユノの声が、重なった。


何を、言っているのか。




二人の困惑した声に、当の本人は苦笑を溢す。




「怖くて確認してなかったんだけど。もう使えないみたい」



そう言って、瞼を閉じるとその上から右目にそっと触れた。


その一連の動作を呆然と眺めていたアサギは、はっとすると部下のその肩をいきなり、でも優しく掴む。