本当に名前の通り平凡なサラリーマンだった。

ひょろっとしてて、でももやしみたいに細い訳じゃない。
顔もブサイクって程じゃないけど決してイケメンとかではない。

顔が濃いか薄いかって言われたら、薄いかなぁ。
うん、薄い。


「これ、あげるよ。」


差し出したのはバーバリーの紙袋。
さっきまで持ってたヤツ。


「えっ?いいよ。だってまだなんもしてないじゃん。」


自分で意外と律儀だなーとか思った。

もらえる物なら貰っとけばいいのにーって。
でもなんかその時は悪い気がしたんだよね。


「俺なんかに会ってくれたお礼。」


「じゃあ貰っとく。開けていい?」


「いいよ。」


この人、あんまり表情変わらないな。

ノーメン?みたいな。
でも魚が死んだような目じゃない。

バーバリーの袋の中身はマフラーだった。


「こんなの貰っていいの?」


「いいってば。
向こうに車止めてあるから、それでどっかご飯でも食べに行こう。」


あたしはマフラーを袋に入れなおした。