姫

そこには、暗いこの場所でもわかるほどの綺麗な艶のある黒髪をしていて、背が高く、黒いマントを羽織っていて、さらには右頬に赤い十字架のような模様が刻まれている不思議な男の人が立っていた。


「だ、誰！？」

「俺の名はアロナイヤ=ジオハード。吸血鬼さ」

「吸血鬼！？」



吸血鬼ってあの、人の生き血を吸う魔物でしょ？

何故こんな場所に。



それよりもこのままでは





殺されてしまう……！




美由は恐ろしくなって、慌てて逃げ出した。


「フッ。逃げても無駄」


アロナイヤはボソっと呟いた。

けれど、一目散に逃げた美由には全く届いてはいなかった。