「あの人は……」



アロがゆっくりと、静かに話し始めた。



「あの人は、本当に姫のことが好きなんです」



「えっ……?」



「姫に他の好きな人がいる、と聞いて嬉しいはずがないんです。あの人は変に不器用だから……」




「悪いと思ってる。でも……」




私がそういったあと、沈黙が続いた。


永瀬君が貸してくれた折り畳み傘を持っている手に力をいれた。





そしてアロが口を開いた。




「……ごめんなさい」





私は何故かそのアロの言葉が少しだけ心に引っかかった。