「ねぇ」


何も言い出せないでいるとき、突然右の方から聞こえてきた声にびくっとした。



間違えるわけない。


これは永瀬君の声。




でも、それでもまだ、私は反応することが出来ないでいた。




もしも永瀬君の言った“ねぇ”が、私に対するものじゃなくて、それを知らずに反応してしまったら恥ずかしい。



でも、もし私に対してだったら反応しないと、嫌な奴だと思われるかも。





でも、永瀬君の前で恥をかくのは嫌だし……。