「おい、野田。神澤は?」

同じクラスの男子が奈津に尋ねた。


「美由?なんか遅れて来るみたいだよ」



「ん?神澤遅れてくるのか?」



突然、奈津に尋ねてきた男子とは違う声が背後から聞こえてきた。


奈津が振り返ると、そこには永瀬がいた。



「な、永瀬君!」


奈津は目を丸くしている。

何しろ、奈津も永瀬と会話したことが今でに一度もなかったのだ。



奈津は顔を真っ赤にした。

今までにないくらい、近くに永瀬がいるのだから。




「そ、そうなんです!用事があるらしいので!」

「なんで敬語?」

永瀬はそう言いながら笑った。


「あ、いや……」

「ま、用事なら仕方ないね」

「で、でも後から来るから……」



永瀬は今度は無言のまま微笑んだ。





――