「で、何がまさかだ…?」

「あの…後宮というか…この国で側室、妾とかは……?」

言いづらそうに聞くと、少し笑って白夜が答える。


「必要ない、俺にはお前がいる」

「いえ、そうではなく…一般的に一夫多妻なのですか?」

「あ?まぁ…そうだな特に法律違反ではないが…」

「では…、陛下も後宮をお持ちなんですか?」


深い皺が寄る事など彩は気にせず訊いた。


「持ってない。必要ない」

後宮と呼ばれる場所はある、だが彩が言うのはそうではない。
さっきも言った言葉、まだ分からないのだ、この鈍感娘は。


「あの私、形だけですよね…?」

「一国の王妃は、伊達や酔狂では勤まらん」

「私には無理です、もっと相応しい子がいます!」

「お前の言う相応しいとはなんだ?」

「…えっと、可愛くて綺麗なお姫様で、国民の信頼も厚い子が」

「そんな奴居ないから、ずっと空位だったんだぞ?」

「そんな!私には無理です!」

ただのニートだった彩、急に異世界に飛ばされた事を飲み込むにも、時間がかかる。

それなのに、国を背負うなんて。



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