「恩……?」

そんなものはない。
あるとしても、彩が知識を貰い、笑顔を貰うだけだ。

「恩だ、結局月妃である嬢ちゃんが陛下を連れて来た、俺らの生活も格段によくなった。楽しみもできて、ここを出た後の事もたぶんだが、全員考えている。未来が出来たんだ……」

「未来……」

「俺はゴロツキ崩れだが、此処にいる連中は、小役人位できる実力のある奴もいる」

よくわからないといった風に首を傾げる。

「フッ…でな、嬢ちゃんの為に働く事を赦して欲しい。王宮にはいられねーが、田畑を耕す事はできるんだ」

罪を赦すと。
この国を豊かにする事が、この小さなお嬢ちゃんの為にもなる。


「赦す事はできません」

涙を溜めた黒の瞳からこぼれ落ちる。


「なぜだ!?」

この少女ならば、嬉しそうに笑うと思っていた。



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