「後宮は、女性がいるよ…百花繚乱、素晴らしい女の頂点達がね」

「あ…失礼いたしました。そうだ、黒麗さまの王妃様にお会いしたい!」

「妃の位は誰にも与えてないからね、全員側姫なんだよ?」

「ぁ…でも元々後宮はそんな所なんですか?」

「そうだね、彩…珍しいのは龍国だけだよ。今は彩一人だしね」

「ですよね、私ひとりでいいんですかね?」

「だからこの間の、夜会で白夜は毎日側姫を選ぶんだよ」

「あ…では、伽の相手選びに私が行ってはダメだったんですね」

「ダメじゃないよ、白夜は一夜限り二度は抱かないからね。誰でもいいんだよ」

白夜を振り返る。
(私は道具だから一回じゃないんだ、はやく妊娠しろとでも思ってるんだ)


抱きたくないだろうな。


「そうなんですか!ま…男性ですし、王様ですからね」

当たり前だと言いたいらしい。


「その点僕は、浮気はしないよ。彩だけを愛する」

「意外ですね、でも黒麗さま両方イケそうですよね…」

オトコもオンナも、両方。黒麗自身、男の格好も女の格好も、その中間もよく似合う。


栄達は肩を震わせている。よく我慢をしている。


「いきましょう」

ふたりで測りに行ったのを見送り、ため息をついたのは白夜。


「黒麗との方が楽しそうだな」

「同性の友達に対する、話し方だけどね」

「う…そうだが、あいつの本性は…」

「わがままお姫様の真価が問われるだろうね、掴みは上々だし」

「上々すぎる位だ、しかし彩の舞は…月妃降臨の舞だったな」

「物語でしか読んだ事ないけど」

「彩はいつもと違ったみたいだしな」

「神懸かり的な美しさだったからねぇ」

「あまりアレをいじめてやるなよ」

「白夜が甘いから、ちょうどいいでしょう」

確かにそうかもしれないと思い、政務に戻る。


白夜の許可なしでは、何も進まないのだ。


絶大な権利と責任、代々龍王が守りし、龍国の繁栄をもたらす彩。


あの小さな肩に、のしかかる責任。



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