(なんと素晴らしい言葉なんでしょ!)


「誰に言えばいいの?」

「女官長さまに…」

今度は驚愕に彩られる瞳に、やっぱりかわいいからきっと……陛下のお手付きになる。


そう思い、自分付きという事は四六時中一緒にいる、つまり手を出す可能性があると考えた。


よく、王妃付きの侍女に手を出した、愛人にしたと聞いた事があるからだ。


アン・ブーリンの様になればと浅はかな考えからである。


キャサリン王妃に自分はなるつもりなのか、つまり…王妃の座から追い落とされるという事だ。


「わかったわ、さあ…そうと決まれば急ごう!」

ルンルンと鼻歌まじりに、着替えさせられ、上機嫌で翠翠を伴い陛下の室には向かわず、女官長に許可を取りに出向く。


そこで聞こえる、侮りや嫉妬の欲望が渦巻く。


こんなになぜ一方的に言われなければいけないのか…本当にそう思う。


「月妃さま…」

翠翠の心配そうな顔に、笑顔を見せて…キュッと口を引き結ぶ。


「この者をわたくしの側に…よろしいですね?」

女官長の是の返事の変わりに頭を下げた、その下の顔は侮りを含んだ顔だった。それは彩には見えない。


勝手に姫さまが我が儘を言っているようにしか、うつらない。


「ありがとう」

礼を言われるのには、驚くが…側室には身分は問わない、最低条件は子を産める健康体であること。


とは言え、第二妃には無理だが。


妃の身分ではなく、側姫として側に侍る。


そして子を産めば、絶大な権力を手に入れる事もある。


今は彩が居るので、二番目の権力者ということだ。


女は虎視眈々と、側姫の地位を狙う、貴族の娘は妃の位を狙う。


そんな中、あの仲睦まじい結婚式である。


彩の頭上には、冠が被される。


明日は戴冠式が執り行われる、今日の夜会は誰も侍らなかったと聞く。


何よりあの月妃は、朱雀王と乱入したという、折角の見初められ権力を手にする機会を無駄にされた。



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