また洋服を作るという我が儘をしようとしている。


――認めさせたい、認めて欲しい。
その気持ちが、彩を支配する。

――好きだと言って欲しい、好きだと言いたい。


――味方だと思いたい、味方じゃない。


――優しくしたのは、道具だから。


――月妃が必要だから。


――ワタシじゃない…。




――ワタシハダレ?


――ナニモノ?


――どうすれば、いいの?



――どうすれば皆の望む私になれる?



――だれか教えて…。


いくども自問自答を繰り返す心。
黒麗は従者の方が迎えに来て帰ったが、彩は白夜の妖獣に乗せて貰う。


前に座り、後ろから支えられて飛ぶ。


「何もできないお姫様、君の我が儘に必要なものは用意するよ?」

栄達の底意地の悪い声が聞こえる。


「月妃舞えたのなら、なぜすぐに言わない?」

栄達の言葉を無視し、彩に話しかける。


「…申し訳ありませんでした」

自分だって舞えるなど思ってもいなかった。


不思議な感覚に包まれた、意識が混濁したようだったが、それを話す気にはならない。


もともと、相談できるような間柄ではない。


(衣装を作って売れたら、銀行から融資を受けて店を作って売り出そう)


そしたらココからでられるかもしれない。


「あの…洋服の事ですが、物差しとまちばり、布にうつるペンにマネキンが欲しいです」

「用意させる」

陛下は栄達を見る。


「朱雀王をどうやってタラシこんだの?まさか、身体?」

「栄達!!」

白夜が声を荒げ止める。
しかし、彩は不思議そうだ。


「黒麗さまには私は対象外でしょう?」

しごく当然のような反応、今までであれば栄達に文句も言う所だろうが。


「……ぷっ……くくっ」

笑いが止まらなくなる白夜を栄達は見て、驚いた表情を見せる。


黒麗のアピールもこの鈍感な娘には通じないと言う事だ。


白夜の心配など、怒りなど杞憂だったのだ…。


相手がコレだと、俺は苦労すると思いつつも、今はまだ…コレで我慢しようと思えた。



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