彩の価値が変わる時。


くるくると回る、舞う紗の衣装、顔つきも変わる。


舞が終わり、紗が地に落ちる。


そして曲が終わる。


「さすがだよ、彩。やはり君は素晴らしい」

くるくると映画やテレビの見よう見真似と、小さい頃からの日舞の経験しかないのだ。


だが、身体が勝手に動いたなぜか、やれると思えたのだ。


「優美であった、月妃」

あまり名前で呼ばなくなった白夜。


その理由は簡単なものなのに、彩にはわからなかった。


いや…わかろうとしなかったのだ。


スルリと階の上に戻り、陛下と黒麗の間にゆったりと座る。


混乱して、自分で何をしているかも分からなかった。

ただナニかが乗り移ったように、動かされている感覚に襲われる。


「彩…キミは素晴らしい、やはり雀国に来てほしいな?」

「ふふっ…戯れ事を」

「キミは面白い…、見ていて飽きない」


楽しそうに、愉快そうに、人生に光が射したかの如く目を細めて笑う。


そのような姿を見せる事はなかった黒麗が。


陛下と栄達が目を止める。

「また、彩で遊びたいから…僕が遊びにこよう。白夜は離すつもりはないみたいだ」

「わたくしも退屈ですから、話し相手が欲しいので、ぜひお願いしたいですわ」

「おや…彩に似合うものを急ぎ作らせなければならなくなったな…」

「わたくしよりも、黒麗さまの素敵なご衣装を見るだけにしたいわ。苦しいもの…」

そう苦笑いを零す、今や黒麗は自分を認めてくれた最初の人だと思っている彩には、黒麗の訪れは楽しいもの。


「そう言わずに、そうだ…婚礼の品として払い下げられない布はいつくかあるはずだ、暇なら異世界の衣装を作ってみてくれ」

目からウロコとはこのことだ。
スカートばかりは動きにくい、そしてコルセットは苦しい。
黒麗の衣装も重たい、機能的ではない。


「はい!」

キラキラと目が輝きを放つ、彩は宝飾や衣装が好きなのだ。



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