「彩、あの簪は君のものだからね」

「でも……」

「いい芸を見せてもらったし、見物料だよ」

見物料に、別の意味も含まれていた事に気づき眉を上げ、緋色の目が濃くなる白夜。


黒麗の手の平に簪が現れ、彩の髪にささる。


「似合ってるよ」

その言葉に嬉しくなる彩のわかりやすい表情をみて、栄達は『知ーらない』と発言する。


「とりあえずお邪魔するよ、白夜」

そう言って、階を衣擦れの音をたて、簪の揺れる音と共に登る。


「彩、きみもだよ」

ばれていたのか、最初から……そう気づき嘆息する。月妃とわかっていて、遊ばれたのだ。


「いつから…ご存知でしたか?」

軽く引きずる衣装を持ちながら、コソコソと話す。


クッションを敷き詰めた場所に座る陛下を見て、とりあえず見よう見真似でクッションを用意する。


「最初から。ありがとう彩…君は美しい」

髪の毛を指に巻き付け口付けを落とす。


「わ…わ」

真っ赤になり、口付けられた髪を一房両手でにぎりしめ、飛ぶように後ろに下がる。



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