船越慶一郎が現れる15分ほど前。


再び「クリステン」


「いい根性してるな、お嬢ちゃん。面と向ってヤクザって言われたのは久々だぜ」


そういうと鮫島は豪快に笑った。後ろの組員達も合わせて笑う。
だが全員目は笑っていない。
その雰囲気に飲まれてしまったマネージャーは顔面蒼白になっている。

ただのヤクザじゃないな、とさすがのカスミも感じ取った。
しかし今はエリコの事が心配だ。かまってる暇はない。


「知らないなら用はないよ」


カスミは踵を返して店を出ようとした。


「まあ待ちな」


「なに?」


「エリコちゃんが拉致られたって本当か?」


カスミは黙って頷いた。


「さっき結花がどうとか言ってたが?」


「エリコを拉致ったバンに鼻にデカイ絆創膏貼ってた女が乗ってたの」


「絆創膏?」


「あいつエリコが未成年だっ、ってマネージャーにチクッったのよ。で、エリコにぶん殴られて鼻折ったんだって言ってた」


「未成年?!エリコちゃんが未成年だって?」