雪に消えたクリスマス

「なんで分かったんだ？いや、だとしたら、俺が本当に死んでいるだとしたら、やっぱりおかしい。なんで葉子や他の人間が俺と会話して、おかしいとか思わなかったんだ？それに、俺にはこの二年間の記憶がある。それはどう説明するんだ？」
　この質問には、玲もさすがに即答では答える事ができなかったのか、しばらく間をおいてから、口を開いた。
「…その、葉子さんって方の事はよく存じ上げませんが、創真君の死を知っているのは、僕と麗、後はもうお亡くなりになりましたが、創真君のご両親だけだと思いますよ。創真君の遺体が発見されたのは、創真君が失踪なさってから半年近く経ってからの事でしたから…他の方は、未だに創真君が失踪したままだと思っているのではないでしょうか？」
　なるほど…。
　俺は、玲の話に何となく納得したが、まだ納得できない点は多かった。
　玲はそれに気づいたのか、俺のために更に言葉を繋ぐ。
「創真君は、二年間の記憶があるとおっしゃいましたが、本当に、そんな記憶、あるんですか？」
　玲のその言葉に、俺は思わずムッときた。
「当たり前だ！俺は二年間、ずっと旅行していたんだ。今でも目をつむれば世界の美しい景色が目に浮かんでくる！」
　俺は、捲し立てるように玲に向かって怒鳴ったが、玲は、いたって冷静な態度で俺を見つめている。
「…では、いつ、何処で、何をしたかを具体的に言えますか？」
　玲のこの質問にも、俺はすぐに答えてやるつもりだった。
「……………」
　どうしたのだろう？
　言葉がでない。
　いつ？何処で？何を………？
　思い出せない。
「だいたい、創真君はどうして旅をしようなんて考えたんです？」
　どうして？
「…それはぁ…親父達の夢を…死んだ親父に変わって………」
　俺は、シドロモドロになりながらそれだけ答えながら、自分で言っている事の矛盾に気がつき始めていた。