雪に消えたクリスマス

「こんにちは」
 俺が椅子に腰をかけて、どれくらいたっただろう?
 突然、部屋の中で声がした。
「どこだ?」
 この部屋には俺以外に人はいない。
 勿論、人が隠れそうな場所も存在しない。
 俺は辺りを見回したが、やはり、俺の他に人はいなかった。
「どこを見ているんですか?ここですよ。創真君の目の前です」
 驚いて声のした方向を見ると、鏡の中の俺が、俺に向かって話しかけている。
 俺は、鏡の中を覗き込むと、実はそれは鏡ではなかった事にようやく気がついた。
 只単に、同じ構造の部屋が、ガラスを隔てて隣り合わせになっているだけだ。
 部屋の様子が、今自分のいる部屋とまったく一緒だったので、ガラス張りの壁を、鏡だと勘違いしてしまったのだ。
「お前………玲か?どうしてここに…?」
 俺には、ガラスの向こうにいる俺が玲だとすぐに分かった。
「どうして?と言われましても…。実際、ここは僕のオフィスですから…。強いて言うなら、僕も呼ばれたんですよ…あの方に」
 玲はそう言うと、ハハッと愛想笑いを浮かべた。
「…まぁいい。俺もお前には聞きたい事があったんだ」
 俺は、改めて椅子に深く座れると、俺より三つ年上の、もう一人の自分と向き合った。
 こうして見ると、本当によく似ている。
「率直に言って、俺はもう死んでいるのか?」
「はい」
 玲の返答は即答だった。
 分かっていたとはいえ、こうもハッキリと肯定されると、さすがに少しこたえる。
「お前、俺と会った時から、そんな口振りだったもんな…いつから気がついてたんだ?」
「創真君がお亡くなりになった二年前に…」 
またしても即答。
 二年前…つまり、初めから何もかも分かっていたというわけか…。