雪に消えたクリスマス

ガッチャン。
 目の前に、扉が現れた。
 俺の手は、空を掴んだまま、しばらく動く事ができなかった。
 四番目の扉………。
「ユナイティッド航空159便はただいまより、搭乗受付を開始します」
 そこは、空港の発着ロビーだった。
 多くの人がごった返して、歩くのもやっとだ。
「わたくし、飛行機など初めてですわ…」
 人々の雑多な声が飛び込むロビー内に、聞き覚えのある声…。
 母さん…………?
「はははっ。誰でも、最初はみんな初めてなものさ。大丈夫、飛行機が落ちる確立は、交通事故を起こす確立よりもずっと低いのだから」
 母に寄り添うように、父が優しい言葉をかける。
「準備はいいか?」
 遠くで、聞き慣れない男の声がした。
「あぁ…所詮日本の検問なんて、ちょろいもんだ」
 数人の外国人が、隅のほうで何やら話をしている。
「樹脂製ナイフに無線撹乱機だ。我が祖国に栄光を!同士達、Jannaの園で再会しよう!」
 男達はそう言うと、またいくつかのグループを作り、散り散りに別れていった。
「デルタ航空221便をお待ちのお客様に、ご搭乗受付の開始をご報告いたします。デルタ航空221便は、5番ゲートより、搭乗を開始いたしました。繰り返します………」
 館内放送が流れると、にわかに、人々が動き始める。
「さぁ…行こうか?」
 父が、母の事を促す。