雪に消えたクリスマス

 俺は、規則正しく並ぶ八つの扉を見据えて、今度は、二番目の扉の前で立ち止まる。
 一番目の扉がいったいなんだったのか?扉の向こうにあった世界が何を意味するのか?それは、今の俺には分からなかった。
 只、分かっている事は、この、八つ並ぶ扉は、普通の扉ではないという事。
 他の扉には、何が…?
 俺は、恐る恐る二番目の扉を開けてみた。
 俺が二番目の扉を開けた瞬間、急に目の前が真っ暗になる。
「ここは…?」
 俺は独り言を呟いたが、それは音としては発する事ができなかった。
 そこは、天上も床もない、只、真っ暗な空間が広がっている。
 俺が入ってきた扉は、姿を消している。
 俺は、扉に戻る事もできず、かといって、この真っ暗な空間では、どこへも行く事もできず、どうしたものかと首を捻っていると、遠くの方から、何かが近づいて来るような気配を感じた。
 それは、俺の方に近づくにつれ、除々に大きくなってくる。
 そして、それが姿を現した時、俺は目をむいた。
 それは、巨大な隕石だった。
 隕石は、真っ直ぐ俺の方へ向かってくる。
 俺は逃げようと必死にもがくが、ここには床も天上もないのだ、蹴る床を失った足は、虚しく空を蹴るだけだ。
 隕石はいよいよ俺に近づくと、視界いっぱいに、その圧倒的な存在感を知らしめた。
 もう逃げられない。
 俺は、思わず目を瞑った。
 一瞬だけゴォッという大きな音がした後、辺りはまた無音状態になった。
 目を開けると、四散した隕石の欠片が辺り一面に広がっている。
 よく見ると、只、真っ暗だと思っていた空間には、無数の星が点在している。
 そして、先ほど俺が見たような隕石が、あちらこちらで衝突を繰り返していた。