雪に消えたクリスマス

 例え覚えていても、ずっと続く白い壁、青い床の変わり映えのしない景色の中を歩いていると、今いったい自分がどこにいるか分からなくなってくる。
 俺がこの道順を選んだのは、確かな勘ってやつだ。
 俺が歩いていると、「この道だ」と、誰かに教えられているような感覚がするのだ。
 左手に折れた十字路の先には、八つ部屋があった。
 …はたして、何番目の部屋だったか?
 確か、一番目の部屋ではなかったのは確かだ。
 そう思いつつ、一番目の扉に目をやる。
 すると、先ほどの受付嬢が言った、「間違った道や部屋には入らないでくださいね…危ないですから」という言葉が思い出される。
 いったい、間違ったからと言って、何があるというのだろう?
 それは、どう見ても普通の扉だった。
 木でできていて、立派な造りをしているが、別に妖しい所は見あたらない。
「別に、普通の扉…だよな?」
 俺は、自分に言い聞かせるように独り言を呟いた。
 俺は、試しに一番目の扉を開けてみようと思った。 
 普通?
 普通という事が、ここであり得るのであろうか?
俺は、恐る恐る扉のノブに手をかけ、そのままカチャリと扉を押し開けてみる…。
 扉を開けると、そこには大きな桜の木が一本立っていた。
 それが桜の木だと分かったのは、桜が満開に咲き誇っていたからだ。
 緑の風に、桜の甘い香りがほのかに加わっている。
「これは………?」
 それは見覚えのある場所だった。