雪に消えたクリスマス

「…ところで、創真君はどうして、突然ここに帰ってこようなんて思ったんですか?」
 不意に、玲が俺に質問してきた。
「…突然?別に突然ってわけじゃないよ。ここは俺が生まれ育った街だし、やる事があったんでね」
 俺がそう言うと、玲がウララに目配らせをした。
 『やる事』というのを、ウララに会いに来たと言わなかったのが気にかかるのだろうか?
 実際には、それが目的の大半を締めている。 黙っていなくなったのだ…さぞ心配しているだろうと、俺も気になっていた。
 只、それだけではない。
「やる事っていうのは、麗ちゃんに会いにくる事じゃないんですか?僕はてっきり…」
 玲は、相変わらず笑顔は絶やさなかったが、少々困惑したような顔で、俺とウララを見比べながら言葉を続けた。
「………で、いつまでいられるんですか?」
「えっ?」
 俺は、玲の質問に少し驚いた。
 いつまで…とは、変な言い回しをするヤツだ。
「また、黙っていなくなったりしたら、麗ちゃんが可哀想ですから…」
 俺が驚いた表情をしたのがよっぽど意外だったのか、玲は補足的に言葉を付け加えた。
 確かに、二年前にふらりといなくなった俺だ、またいついなくなるのか?と心配されてもしかたがない。
「もう、突然いなくなったりはしないよ…玲さんにも迷惑かけましたね…」
 そう言って俺が頭を少し下げると、玲は「いえいえ」と笑っていた。
 ルルルルル…ルルルルル…!
 その時、携帯電話の呼び出し音が、静かな店内に高らかに鳴り響いた。
…。