雪に消えたクリスマス

「そうね…。きっと女の子ね♪お母さんも、そんな気がしてきたわ!………でも、そうすると、今編んでいるミトンの色、変えなくちゃいけないわね………」
 お母さんはそう言うと、もう、ほとんどできてしまっている編み物に、目を落とした。
 薄い、青色の手袋だ。
 お母さんは「ま、いいか?」と、小さなため息を一つして、ボクにおいでおいでをした。
 ボクがお母さんの側に行くと、お母さんは、ボクを自分の膝の上に座らせた。
 お母さんは、ボクの頭を撫でながら、空を流れる雲を眺めている。
 ボクは、お母さんの膝の上で、なんだが眠くなってきちゃって…。
 なんだかとっても…気持ちいい…。 
柔らかな風が、花弁を遠くの街まで運んで行く。
 いつまでも微睡んでいたいような、優しい空間…。
「あら?寝ちゃったのかしら………?」
 自分の膝の上で眠っている我が子を、雪香は愛おしく見つめた。
 不意に、寝ている我が子の顔が、愛しい人に見えて、悲しくもないのに、涙が出そうになった。
 知らない筈の、切ない記憶がよみがえってくるような気がして、雪香は、空を見上げた。
「…創真………」
雪香は、愛しい我が子の頭を優しく撫でながら、我が子の名前を口にする。
 それから、雪香はまた、空を見上げた。
 あるいは、その、もっと先を…。