雪に消えたクリスマス

　俺は夢を見ていた…。
　そこは、桜の花が咲き乱れる綺麗な丘の上だった。
　世界が全て大きくて、空が今以上に高かった。
　草原の草の香りと、ホンのりと甘い桜の花の香りが鼻をくすぐる。
　暖かい春の木漏れ日が、光のダンスのようで楽しかった。
　春雨が作った水たまりに、自分を映してみる。
　俺は、まだホンの小さな子供だった。
　遠くにある大きな桜の木の下で、俺の母親らしき女性が編み物をしている。
　不意に、男が母の近くに寄ってきた。
　あれは…………？

　１２月２４日、午後６時。
　俺は、車のヘッドライトの光と、キ、キィというブレーキの音で目が覚めた。
　辺りはもう、真っ暗だ。
　車のヘッドライトが消え、見知った女性が、車から降りてくる。
「………創真」
　それは、正しくウララだった。
「よぉ」
　俺は、軽く手を挙げ、ウララに微笑みかける。
　ウララの方は、少々複雑な顔つきで、俺に笑顔を返した。
「…創真…なんか、透けて見えるよ………」　
　ウララの指摘に、俺は首をすくめて見せる。
「正に透けるような肌…なんてな」
　俺が笑うと、ウララもつられて笑った。