雪に消えたクリスマス

 玲の言っている事は、俺には少し難しかったが、ようは、幽霊が人前に姿を現すコト事態は、そんなに珍しい事ではないと言っているらしい。
「…しかし、肉体を失った霊体は、非常に脆くなります。肉体がある時と違って、エネルギーを補給する事が難しくなりますから、あまり現世に留まっていられないのですが、創真君の場合はあの方が力を貸したんですね。でも、その力も尽きかけています」
 俺は黙って、玲の話に耳を傾ける。
 玲の言う事は難しい言葉が多すぎて理解に苦しむが、的は得ているようだ。
 実際には、幽霊だの霊体だのと、馬鹿げた話のオンパレードで、本来の俺なら一笑しているところだ。
 しかし、信じられない話だが、俺が実際に死んでいる証拠は沢山あるが、生きているという決定的な証拠を俺は得られていない。
 ここは、玲が言う事が正しいと認めざるを得ない。 
 どこをどうひっくり返しても、俺が死んでいる事実は変わらない。
 そう認めると、今度は、頭の中の妙なモヤモヤが少し晴れて、スッキリとしてくるから不思議だ。
 しかし、そうすると、次の疑問が俺の頭の中に浮かんできた。
「じゃぁ、どうして、俺はまだここにいるんだ?やっぱり、自分の死んだ事に気がついていなかったからなのか?それにしても二年経って今頃…」
 俺のこの質問には、さすがの玲も首を捻った。
「霊体は、無意味に現世に留まる事はありません。例え留まっていたとしても、先ほども言ったように、霊体は脆く、すぐに消滅してしまうからです。それでも現世に留まっている霊体は、必ずなんらかの目的を持っている筈なんですが…」
 玲はそう言うと、僕には分かりませんといった様子で首を捻っていたが、首を捻りたいのは俺の方だった。
 何らかの目的や意味があると言われても…俺にはそれがなんなのか?などという自覚はない。