「いかん!急がな!!」


郁夫は 泳ぐのは得意だったが

ぐったりして 重くなったヒカルを

浮き輪もなしで 岸までたどり着かせるには

かなりの体力を消耗する


郁夫たちを 心配して探しに来た

釣り仲間が


「郁夫ちゃん!コレにつかまりぃ!!」


と釣り用の竿を 海に差し出した


郁夫は なんとか・・・なんとか・・・泳ぎ・・

そして やっと・・・竿に手が届いた


「くぁっ!!」
 

2人の仲間に引っ張られ

郁夫とヒカルは 一気にテトラポットに到着した


「・・ヒ・・・ヒカルを・・・」


郁夫は ぐったりしたヒカルを

仲間に先に引き上げさせた


「おうっ!もう救急車にも連絡したが!」


仲間の言葉に 郁夫は


「し・・心臓マッサージを・・・ヒカル・・に・・」


「今 黒木さんがしよるから 大丈夫やが!

郁夫ちゃんも早く 上がりぃ!!」


釣り仲間が手を差し出した


しかし この時


『心臓マッサージ』が必要だったのは

ヒカルだけではなかった


瞬間的な体力の消耗で

郁夫の身体にも『異変』が起きていた

持病の心臓が発作を起こしたのである


「…ぐっ・・ぐううぅ・・・・・・」