『樹花は?』

オレは オレの口からこの言葉を出すのが怖かった


『知れ』ば


オレは その事を


『受け入れなければならない』


「ヒカルくん・・・」


樹花の母親は オレの方を向き

押さえていた口元のハンカチを外した


「ヒカルくん・・・樹花ね・・・

手術が受けられるの!」


「えっ…」


オレは耳を疑った


「アメリカの病院で 脳外科にいらした先生が

今度日本に戻ってこられるの

それが この病院なんですって

しかもね その先生・・・

3ヶ月前に樹花と同じ症例の患者さんを

手術なさって 成功しているの

それを学会でも発表なさっていて

とても評価されている方らしいの」



オレは まだボーッとしていた


『樹花が手術・・・』


今まで『手術さえも出来ない』

と言われ続け

『生きる望み』など無かった樹花が


『手術・・・』


「もちろん・・・

手術の成功率は高くはないけれど

放射線療法と併わせて治療すれば

『可能性』はある!って・・・」


オレは 樹花の母親が喋り終わらないうちに

樹花の病室へ走っていた

いや 飛んでいったのかもしれない