オレは イマイチその言葉には納得できないでいた

『何もするなというのなら 人間らしさとは 一体なんだろう・・・

昔、先生と話した善霊界と悪霊界を統合することなんて出来るのだろうか

出来たとして それは 一体どんな世界なのか

人はどんな生き方をしているのか

想像もつかない』


そう 思いながら日村先生の話の続きを聞いた


「だからね… 奥村君

『浄化』を担当する者にとって

ほんの少しの『知』で心が揺れてはいけないのよ

『真理』を極めれば 心が揺れる事などなくなるもの…

『浄化』の際 心が揺れるという事は

『供養者』にとって とても危険な事よ

『ほら やはりお前では出来ないだろう!』

と悪霊からつけ込まれるのよ

それでは 供養は失敗し またその分の『報復』が返ってくるわ」


「・・・・じゃあ どうしたらいいんですか?」


「本当の『仏』になりなさい」


「えっ?死ね…って事ですか?」


坂本が プッと笑った

オレは 横目で坂本を見たが無視して日村先生を見つめた


「ええ… そうね『死んで』もらおうかしら・・・生きながらね!」


オレは 少しだけホッとした

『臨死体験』でもさせられるのではないかと 冷や冷やした


「でも・・・『生きながら・・・死ぬ・・』って どうするんですか?」


「これよ」


日村先生は バッグから また何やら取り出し オレに手渡した


「はあ・・・」


『般若心経』と書かれた『お経』だった

これをいつも 供養の時に使っていたのか・・・


「世の中には 沢山の法典があるけど 『霊』を成仏させるための『お経』は

それで十分よ

その中には成仏させるための『真理』が詰まっているわ

それを 勉強なさい

会得すれば 少しだけ新しい世界が開けるわ」