石の前に日村先生が座り

あとの皆で 日村先生の後ろに

3列になって座った


そして


『本供養』(ほんくよう)がはじまった


手順は オレが今まで立ち合った供養と 少し違っていた

石の前に一人一人座ってする供養に 『線香』を用いていた


毎回使っていた『護摩木』も

今日は無い


人数が多い為 線香をあげるのにも

順番が回ってくるまでが長く感じられた

特にオレは いつも一番最後だ


最初に 高野さんのご主人・ご夫人 瓜生さんご主人・ご夫人・・・・



オレは 頭がボーーーッとしてきた


『やべぇ 眠くなってきた 寝てる場合じゃないって!』


そう自分に言い聞かせながら 気合を入れ直すが どうしても意識が遠のく

すると 少し下の方から 何やら『音』が聞こえてきた



ギイィ… ギイィ…


『・・・何の音だ?』


オレは 耳を澄ませた


ギイィィ… ギイィィ…


その音は だんだん近づいてくる


『舟を漕ぐ音みたいだな・・・』


オレは不思議に思った この山の下に海や川はないぞ・・・


「はい 着きましたよ…」


男が ささやくように喋った


「恩に着ます」


『女性の声だ』