「リンコとはいつから会ってるの?」

坂本は 後部座席に座っているリンコをチラッと振り返り リンコと目を合わせた


「事故から3年絶ってからだから・・・4年くらい前かな?」

答えたのは リンコだった


「どっちから連絡したの?」


リンコが黙ったので


「俺から」


と剛が答えた


「へえ~」

としか オレは言いようがなかった


「俺 事故の時 リンコのスクーターダメにしちゃったから

だから 俺も働きだして その分のお金貯められたから

リンコに返そうと思って連絡したんだ」


後ろからリンコが


「そんな事よかったのにぃ~」


とまた 泣き出していた


「…!働いてるんだ」


「うん それは日村先生の紹介で」


『日村先生とは そんなに前から付き合いがあったのか…』


オレは 少しショックな気がしていた

自分なりにもがき苦しんで生きてきたこの7年間の『無駄』を

日村先生との再会で オレが1番乗りで 気付いて頑張っているつもりになっていた

でもそれを オレの横に座っているこの坂本は オレよりずっと前から

こんなに過酷な運命の中を こんなに『笑顔』で『生きている』

オレは 自分が恥ずかしくなった


「この顔だから しばらくは外に出られなくて引きこもってたんだ

でも いつまでもこうしちゃいられない 兄貴からも『母さんを頼む』って言われてたから

『何かしないと!』って丁度思ってたところに 仕事の紹介をしてくれるって 島田先生から連絡があったんだ その職場と取り次いでくれたのが日村先生だったんだ

お互い顔を見なくていい パソコン部品の組み立て工場の出稼ぎがあってさ

寮もあるし 仕事中は帽子とマスク着用だから 目だけしか出てないし

特に人と話しする事もないから 当時のオレにはそれが有り難かったんだ

それでも結構 給料良くて 普通の人と同じ生活くらいは出来るような稼ぎはあるんだ

オレも 仕事しだして5年目だし 今は『シフトリーダー』やってるよ」