福田病院に入院している 病室へ行くと ベッドにあおむけでねている樹花は

目を開けて 白い天井を じ~っと 眺めていた

オレが 入ってきた事に気づくと 身体を起こそうとした


「起きなくていいよ 寝てろ!って」

オレは 起きようとする樹花を 再び横にさせた 


「ピカちゃん!来てくれたんだ!仕事は?」


樹花は 思いがけないプレゼントでも貰ったかのように

オレの戻りを 喜んでくれた


オレは 日村先生と会う事を 樹花には 内緒にしていた

今日もバイトがあると ウソをついていた


「うん 早く終わった」


「いつも 仕事 お疲れサマ

ピカちゃんも 仕事忙しいのに ゴメンね」


今日は 樹花も 調子がいいようだ

オレは ホッとした 


ところで『ピカちゃん』とは 恥ずかしいが 『オレ』の事だ


付き合いだしてしばらくして

オレが 樹花に いつまでも『奥村さん』じゃ堅苦しいって言ったのがきっかけだった


ヒカル ヒカリン ヒカルさん ヒーくん ヒーちゃん・・・


最後には とうとう『ピカチュウ』と言われ


『オレは ポケモンか!』


ってコトで 今の『ピカちゃん』に 落ち着いた


オレの中では 『ピカチュウ』よりマシだと思っている



「ねえ ピカちゃん・・・」


「んっ?」


「今ね 考えてたんだ」


「なにを?」


「死んだ後の世界のこと」


オレは 返事をしなかった

返事をして その後を 樹花が話し出したら 『死んだ後の世界』が 樹花に もっと近づいてきそうな気がしたからだ

樹花は 自分の病気のことを すでに医者から聞いて知っていた