「そう・・・『手術』が出来れば1番いいわけね・・・」


日村 令子は そう言いながら どこか遠くを見ていた

まるで 未来の樹花の姿を 宙で見ているようだった


オレは やっと 『本題』に入る 気持ちが整った


「先生!」


オレは イスから立ち上がり 日村 令子に向かって 『土下座』した


「先生・・・すいませんでした・・・オレ・・・先生に あんなヒドイ事言っておいて

本当は・・・今更 合わせる顔なんて ないんですけどっ でも オレ

『本当の事』がやりたいんです  このまま・・・

このまま『振り回されて』終わりたくないんです」


オレは ブラウンのカーペットの床に 頭をつけた


「奥村くん・・・ 頭を上げて 座って」


日村 令子は 穏やかな声だったが  

オレは 『許す』というまで『土下座』をやめる気はなかった


「ほら 座りなさい そんな所に居たら 話しが出来ないでしょう」


日村 令子の口調は


『元々怒ってなんかいない・・・』


そんな 柔らかさがあった


オレは 込み上げるモノがあったが 『今』は泣くわけにはいかなかった


泣いても 何も変わらない


オレは 『変え方』を 日村 令子に学びに来たのだ


愛する 樹花のために・・・


オレは 『話しが出来ない』と言われ  渋々イスに戻った


「私も 見くびられたものね」


イスに腰掛けたオレに 日村 令子は そう言った

顔を見ると 笑みはなかった