≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~

輪子に そう詰め寄られて 看護婦は たじたじになっていた


「はい・・・ただ・・・」

「ただ・・・って 何ですか?」

「実は 昨夜・・・坂本さんのお兄さんが お亡くなりになって

お兄さんのいらっしゃる病院から お母様がこちらに電話をかけてこられて・・・

2~3日 坂本さんの看病に来られないから お願いします・・・って」


「お兄さん・・・って・・・剛のお兄さんですか?」

「はい・・・ずっと 植物状態でいらしたみたいですよ」


『植物状態・・・』


「剛は その・・・お兄さんが亡くなったこと 知ってるんですか?」


「いいえ・・・ 今はまだ『言わないでくれ』と お母様から口止めされていますから・・・

坂本さんに 面会なさるかどうか尋ねてきますね お名前は?」


「いえ・・・やっぱり・・いいです ・・・失礼しました」


そう言って輪子は 病院の玄関を後にした


輪子は 剛が無事であるという事が 確認できただけでも良かったと思った

しかし 剛が 自分に『お兄さん』の存在を打ち明けてくれていなかった事を

正直 寂しく思った

入院中の 剛に このような感情も 今はぶつけられない・・・

輪子もまた 1人で 一つ一つ 『試練』を乗せた 『波』を乗り越えなければならないのだった









「私ね 今 もう少し 自分を見つめ直す時期かな~ なんて・・・

なんか こんなに一緒にいたのに 私・・・剛の何を見てきたんだろうって・・・

どうして 剛は 全部打ち明けてくれてなかったんだろう・・・って

なんか 反省モード・・・入ってる!」


リンコは 苦笑いをしてみせた

同時に オレの心の中には 大きな嵐が吹き荒れていた



この前の『供養』はなんだったんだ・・・


リンコから 坂本の兄の死を聞き 

供養したことを『すがすがしい』と思っていたことにさえ 腹が立ってきた

自分がイヤになった  みんなを巻き込んで 早朝から山に登らせ

『供養』させた・・・  なんの『意味』もなかったじゃないか