次の日 いつの間にか オレは学校に居た

朝 どうやって起きて どうやって顔を洗って

何を食べたのかさえ 覚えていない

ちゃんとカバンを持って 制服を着て登校していたのが

不思議なくらいだ

オレは 誰にも挨拶せず ボーッとしたまま 自分の席に座っていた


この何日間かで オレの『人格』が 完全に崩れたカンジだった


「奥村くん・・・」

教室の後方の出入り口から オレを呼ぶ 女子の声がした

オレは 力なく 後ろを見た

声の主は リンコだった

オレが振り向くと リンコは 教室に入ってきた


「・・・あれから・・・どうだった?

剛・・・気が付いた?」


オレの 頭の中で 剛のあの苦しそうな『うめき声』が充満していた


「うん・・・気が付いた」


「ほんと?良かったーっ」

オレは 『お気楽だな』と思った


昨日までの オレなら 恐らく リンコと同じ反応をしていただろう


昨日のオレの 『ものさし』は 『坂本が急変して亡くなる」それが『最悪』の結末だった

しかし 『急変』でなくとも 『生きる』ことでの

『苦しみ』を知ってしまったオレの『ものさし』は 

伸び縮み自在の『スケール』が『シャッ』と一瞬で 『ゼロ』に戻ったかのように

巻き戻されていた


『君も帰ったほうがいい』

島田さんの その言葉は オレが こういう心境になる事を予測してのことだったに

違いない

オレは 改めて 島田さんの大きさを 感じた


「ねえ 今日 剛のお見舞い 一緒に行くでしょ?

私は ついでに ハルのお見舞いも行こうと思ってる」


『ついで』か・・・

オレは リンコには 悪いと思ったが 

つい

笑ってしまった

『おかしい』んじゃない・・・


『哀しい』・・・笑いだ・・・