「顔面を強く打ってはいますが

幸い・・・脳挫傷などの心配は

ありません・・・・命には

別状ない と言っていいでしょう・・・」


それを 聞くと 坂本の母親は

片手で口元を押さえ

崩れ落ちるように 泣いた


「・・・ありがとう

・・・ございました・・・」


かすれた声だったが

坂本の母親は 島田さんに

礼を言った


ガラガラガラガラッ


手術室から 坂本が・・・

いや 正確に言うと

『坂本らしき』患者が

手術室から 運び出されてきた


坂本の頭は 昔 テレビで見た

『ミイラ男』のように

包帯で ぐるぐる巻きにされていた


包帯で隠れていないのは 

右目と口 だけだった


崩れ落ちていたはずの 

坂本の母親は いつの間にか

ストレッチャーに乗せられた

坂本の隣に居た


「剛・・剛・・・

母さんよ!大丈夫だって!

剛・・・よかった・・・」


「では 病室まで運びますね」

ストレッチャーを引いている

看護士の一人がそう言って

点滴につながれた坂本を

そのままストレッチャーで

エレベーターの方まで連れて行った

坂本の母親も その横を

ピタリと付き添って行った