オレの家に 連絡があったのは

さっきオレが 坂本を玄関で

見送ってから 1時間後だった


ピロロッ ピロロッ


オレの 部屋に設置されている

電話の子機が 鳴った


ピロロッ ピロロッ


『母さんなんで出ないんだ?』


と思ったが さっき 買い物に行ってくると

1Fから言ってたっけ・・・


ピロロッ ピロロッ


「はい もしもし」


電話に出た時は『詐欺』や『悪徳商売』に

引っ掛からないように こちらから

『名乗るな』と 母さんから言われていたので

オレは それを実行している


昔は「○○でございます」

と言って出ないと 『非常識』呼ばわり

だったらしいが 


『今日の非常識は 明日の常識』

『今日の常識は 明日の非常識』


こうやって・・・

『時代』とは

変わっていくもんだ 


この『変化』に柔軟に対応できる

モノだけが 最後に『生き残る』


1年の時 生物の小池先生が

ダーウィンの『進化論』から

このように推測出来ると

話してくれた事がある


「・・・ハァ ・・・ハァ・・」


電話の向こうからは 思い詰めたような

荒い『息』だけが 聞こえてくる

でも どうやら女性らしい・・・


『女の 変態か?』

オレは そう思いながら もう一度だけ


「もしもし!」

と ふてくされたように 言ってみた


「もしもし・・・」


その声は 涙ぐんでいた