「亡くなった 人の事は よく知らない

でも オレの母さんと一緒に 

山に登った人たちは 全員 

気が狂ったみたいになって

登山初心者の母さんを 置き去りにして

山を下りて行ったんだって

母さん一人が 事故にあった人の事を

どしゃぶりの中 ふもとの人たちに

知らせに行ったんだって」


これを 中道さんと島田さんが聞いたら

一体 どうなるだろう・・・

恐らく2人は 怒りに身体を震わせるだろう


「そう・・・なんだ」


オレは 迷った

おとといから昨日にかけて起きた出来事を 

洗いざらい 坂本に話すべきなのか

はたまた このまま 『母親の素顔』を

知らないままの方が 幸せでいられるのか


この時の オレは 『後者』を選んだ


だが オレは 後ほど この事を


『後悔』することになる・・・


「俺が 今日・・・ここに来たのは

お前とハルちゃんが 『呪われて』

うまくいかなくなったんじゃないか・・って

それを 伝えたくて・・・」


そうだったんだ・・・


でも もし『呪い』のせいで

オレとハルが うまくいっていない

のだとしたら・・・
 

坂本・・・

お前みたいな 『善人』でさえ

お前とお前の母親の恐れる

『呪い』の 

『加害者』なんだ