「確認をとりますので 少々お待ちください」


そう言うと 受付の女性は 手際よく内線電話をかけた


『確認』とは 恐らく オレの前の 相談者が

もう 終わったかどうかだろう


「日村先生ですか? 受付の 野田です

1時半にご予約の 奥村様が お見えです・・・

はい・・・ あっ よろしいですか?

はい では お通ししますね」


女性は ガチャッと 丁寧に受話器を戻すと

受付から さらに右奥へ向けて 手を差し出した


「こちら まっすぐお越しになって

一番奥左手のお部屋にお入りください」


「・・一番奥ですか?」


「はい 一番奥に 『Cルーム』という

表示がございます そちらになります」


相変わらず 女性はニコニコ顔で 案内してくれた


「有り難うございます」


オレは 軽く会釈して 室内の細い通路に

3つ 並んだ部屋の 一番奥『Cルームへと向かった

心臓というより 胃の辺りがバクバクした


日村 令子・・・


彼女と会うのは 実に7年ぶりだ

そう 彼女の教育実習が終わって

オレの通っていた高校に 日村 令子が

来なくなってから 一度も会ってない


『Cルーム』

と シルバーのパネルに黒い文字で表示されたドアがあった


「ここだ・・・」


オレは ゴクッと ツバを呑み込んだ

この厳かな 木の扉の向こうに

日村 令子は 居る


コンコンッ


オレは 汗ばむ手を グッと握りしめて

『Cルーム』のドアを ノックした