「ホントに いいんだね?!」

背中越しに聞いた ハルの言葉にも

オレは 振り返らず 個室を出た

出てすぐ オレは 走って階段を下りた

オレが居なくなった後の 部屋の中の様子を 

知りたくなかった


オレは ハァハァ言いながら 1Fの自動扉の

前に立ち 開くのを待った

丁度 正面から ハルの母親が 病院に

戻ってきた


「あら 奥村くん もう帰るの?

よかったら これ・・・」


ハルの母親は 何かおやつらしきものを

オレに差し出してくれたが

オレは 見えないフリをして


「急ぐので 失礼します」


と ぶっきらぼうに言って 駐輪場へ走った

どうせ ハルの病室に戻れば オレたちの

間に 何があったのか このカンのいい母親なら

自分の娘の様子を見て気が付くだろう・・・


オレは そう思いながら チャリをとばした

ビュンビュン飛ばした

そして まだ そんなにこいでもいないのに

息が荒くなり 胸のあたりも苦しくなってきた

それでも まだこぎたりなくて

家に帰る 道とは 違う 河原へ向かう

脇道に入っていった


ハァハァ・・・

自分の 息が耳の中にこもっているかのようだ

胸が痛い

オレは 体中から 血の気がなくなるのを感じた


なんてことを してしまったんだ


ハルを  失った・・・


笑うと目がなくなる  おどけて笑って

怒って  また 普通にしゃべり出す

俺たちの毎日が・・・

たった 今 消えた・・・