帰りの車内は、やけに静かだった。

車を運転するフジハラさんの奥さん、助手席のフジハラさん、後部座席の私。


美幸ちゃんは、私の膝に頭を乗せ、眠っている。



「フジハラさん」



美幸ちゃんの髪の毛を撫でながら、私は言った。



「なに?」


「宮崎クロエと面識あるんですね」


「あー、それは………」


「実に8年ぶりね」



フジハラさんの声を遮ったのは奥さんだった。



「ちょっとね、色々あったのよ」


「宮崎クロエは、"○○の所に行きたい"と言ってました」


「……………」


「誰ですか?」


「……………」



奥さんは、私の自宅に着くまで、何も言わなかった。



「ほら、早く降りな」


「はい」



言われるがままに車から降り、



「今日は、有難う御座居ました」


「いいのよ。で、さっきの答えだけどね、




















大切な人間を傷付けられるって、その人を狂わせるもんなのよ」




そう言い残して、車は走り去った。














了。