「………………は?」



一瞬、何があったのか理解出来なかった。
また目を閉じてしまったから。


鈍い音の後、井村の上に※※※※※※が倒れたのだ。



お、重いよ………。





「は……………」



玄関に現れた謎の女性。



「大丈夫? 怪我人は?」


「あ、この井村と※※※の妹さんが……」


「貴女は?」


「大丈夫、です………」



ハイヒールをカツンと鳴らし、私の背後で気を失っている※※※の妹を抱きかかえた女性は、長身の身をタイトジーンズとセーターで包み、長い髪を綺麗にひとつにまとめていた。


気が強そうな雰囲気がする女性だ。



「あの………?」


「ああ、貴女川上さんよね? 主人がいつも迷惑かけてるっていう………」



え?

は?
私に? 迷惑?
いつも?



「ふ、フジハラさんの……」


「嫁です。ゴメン、実は心配だから尾行してくれって主人に頼まれてまして」



え?
ふーふ?
この人と、フジハラさん?

っていうか、この人は※※※をどうやって倒したの?



「あ…………」



右手に傘立て掴んでた……。

成程、それで、ガツン!とやったわけか。


って、そんな事を考えてる場合ではない。



「あの、救急車をっ」


「呼びましたよ、彼が殴られる直前に」



直前まで傍観してたんですかアナタ……。



フジハラさんの奥さんは傘立てを放り、※※※※※※の妹を玄関の土間に寝かせて様子を見始めた。



「…んー……重傷ではないみたい……」



私もそれに見習い、井村を玄関マットの上に静かに横たえた。

マットに赤い染みが広がる。



ポケットから出したハンカチを傷口に当てた。



「そこまで深くはないみたいね」


「よかった………」




ちなみに、※※※※※※は白眼を剥き出して倒れているのだが。

このえげつない顔を見て、彼の心配をしろと言われても、出来そうにはない。




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