窓際に移動し、厳しい表情で街を見下ろし無言になる本橋に、一人の男が近寄った。
「知事。こうなったら、わずかでも、私たちなりの抵抗をしようではありませんか」
「副知事・・・私たちなりの抵抗、とは?」
「はい・・・」
副知事は後ろを振り返り、白衣姿の男たちを自分たちのもとに呼び寄せた。
「彼らは近隣の大学研究所に勤務する研究者たちです。政府の動きがあまりにも早かったので『大阪ワクチン』に対するワクチンを開発するまでには至りませんでしたが、彼らが元々研究していたものが、きっと、私たちの手助けになるはずです」
本橋は副知事の横に進んで、白衣の男たちを見た。どの顔も、覚悟を決めた、決死の面持ちをしている。
「その研究とは?」
本橋の質問に、ひとりの白衣が代表して答えた。
「知事、こんな時なので挨拶は省略させていただきます。私たちが研究しているテーマとは、ある意味、今回の大阪解体とは真逆を行くものです。正式名称はまだ決まっていませんが、我々は仮称としてこう呼んでいます。大阪凝縮、と」