「みなさん、ご安心ください。化学兵器といっても人の命を奪うものではありません。使用するのは、公安部特殊研究室が開発した、人の体内から『大阪的なものだけ消し去る』という特殊なクスリです」
若い役員は青い液体の入ったフラスコを彼らに見せた。
「試しに、大阪出身の坂田議員、飲んでみてください。おいしいから」
「おおきに」
坂田がフラスコの中身をグビグビと飲み干す。直後、彼すら予想しなかった事態が起きた。
「なんか、炭酸の抜けたサイダーみたいな味だね。こんなもので、大阪文化がどうこうできるなど・・・あっ、なぜ俺が標準語をッ!?」
「どうですかこの効果。坂田議員、たこ焼き食べますか?」
「嫌だ、あんな丸っこいセクシャルな食べ物などッ!あぁッ、おかしい、あれほど大好きだったはずなのに、たこ焼きに対する憎しみが心の中に渦巻いているゥー!」
「ほらね。自衛隊、米軍が各方向から大阪に進軍し、このクスリをガスにして大阪に散布します。そして、おそらく最後まで抵抗が予想される大阪府知事がいる府庁には公安部の別働隊が空から攻撃を仕掛けます。体と頭を同時に叩く作戦です」
若い役員は唇を歪めて意地悪そうな笑みを作って見せた。