「ねぇ、瑞樹?」
寝室で着替えていると、星羅が入って来た。
「ん?」
ネクタイを結びながら返事をした。
「お小遣いちょうだい?」
甘えた声で、星羅が手を差し出してくる。
「この前やったろ?」
「だってもう無くなったんだも~ん」
星羅はベッドにゴロンと寝転ぶ。
「自分の父親に言えばいいだろ?」
「うん。パパからも貰うけど、瑞樹からも貰いたいの」
はぁ……まったく……。
「いくら?」
「うーん……。とりあえず3万円かな?」
俺は何も言わずに財布から3万円取り出して星羅に渡した。
「ありがとう!瑞樹、大好き!」
星羅はベッドから起き上がり、俺に抱きついてくる。
俺の知らないシャンプーの香りが鼻を掠める。
好きなのは俺自身じゃなくて、金をくれる俺だろ?
「じゃー、行って来るから」
星羅の体を離してベッドに座らせた。
「うん。バイバイ」
手を振る星羅。
俺はマンションを後にした。