「お前は駅にいた時点で、香月の耳が聞こえないって知らなかったんだから」
「そうだけど……。謝った方がいいのかな?と思ったり……」
俺はポツリと呟いた。
「謝ってどうすんだ?お前は悪くないだろ?さっきも言ったけど、聴覚障害者は見た目は普通だからな。もし俺がお前と同じ立場ならお前と同じこと思ってたかもしれないな」
「そっか……」
俺はマグカップを見つめたまま言った。
「それに、香月は同情されたり好奇の目で見られたりするのが嫌いだから。だから何も言わずに普通にしてるのがいいと思うけど?」
「そうだな」
「あぁ」
咲哉に話したことで少し気持ちが楽になった。