「香月?本当にいいのか?」
『えっ?』
阿川先生を見た。
「川瀬先生に会わなくて本当にいいのか?」
『うん……』
嘘だよ……。
本当は会いたいよ?
先生に会いたい。
「後悔しないか?」
『…………うん』
「そっか……」
阿川先生の目は、とても悲しそうだった。
ダメ……。
我慢しようと思ってたのに……。
ポロポロと涙が落ちていく。
後悔したくないから先生に会わないって決めたのに……。
『阿川先生?』
「ん?」
『私、帰るね。コーヒーごちそうさまでした』
「あぁ」
『今までありがとうね。阿川先生、元気でね!』
私は流れる涙を手でゴシゴシ拭いながら笑顔を見せた。
「泣くな、バカ!香月が泣くと俺まで泣けてくるだろ?」
阿川先生は目をウルウルさせながら、でも笑いながらそう言った。
「遅くなったけど、卒業おめでとう。またいつでも遊びに来いよ?コーヒー飲ませてやるからな」
『うん!ありがとう!』
「握手しよ」
阿川先生が手を出してきた。
私は阿川先生の手に自分の手を添えた。
ギュッと握られた手はポカポカと温かかった。