【先生×生徒シリーズ】壊れるほど抱きしめて―先生の声を聴かせて―




私は教室を出て保健室に行った。


保健室に行くのも今日が最後。


教室よりも思い出がいっぱい詰まった保健室。


保健室のドアを開けた。


今日は白衣じゃない阿川先生がいた。


何人かの生徒に囲まれて楽しそうに写真を撮ったり話をしてる。


もう少し後で来れば良かったかな……。


でも保健室にいた何人かの生徒は、私と入れ違いに保健室を出て行った。



「香月!」


『私、お邪魔だった?』


「そんなことないよ。あいつら、これから川瀬先生のお見舞いに行くって」


『そうなんだ……』



私は、いつもの椅子に座った。


この椅子に座るのも今日が最後。


阿川先生がコーヒーを出してくれた。


このコーヒーを飲むのも今日が最後。


卒業式の時には泣かなかったくせに、今になって涙が出てきそうになる……。