「なんだはないだろ?親友がこの学校に異動になって嬉しくないのか?」
俺は咲哉がいる机の横にあった丸椅子に座った。
俺と咲哉は高校の同級生。
大学は別々だったけど俺が唯一、大親友と呼べるヤツだ。
「お前、さっき忘れ物がどうとか言ってなかったか?」
机の上に置かれた2つの空のマグカップ。
誰か来てたのか?
「あぁ」
咲哉はパソコンの画面を見たまま返事した。
「これか?」
俺は、保健室の奥にあるカーテンで仕切られたベッドの方をチラッと見て、咲哉の前に小指を立てた。
「何考えてんだよ。お前とは違うし……」
咲哉が笑いながら言った。



