30分ほど先生と話して病室を出た。
廊下の椅子に座ってる阿川先生がいた。
私に気付いた阿川先生は椅子から立ち上がる。
「終わった?」
『うん』
「帰るか」
『うん』
私は阿川先生に付いて病院を出た。
外はすっかり暗くなっていて、寒さも増していた。
阿川先生に家の前まで送ってもらった。
『ありがとう』
「いいえ」
『阿川先生?ちょっと待ってて?』
「あ?あぁ」
阿川先生は不思議そうに私を見た。
私は家の中に入り、家族用に作ったパウンドケーキを半分に切って、それをラップに包んで紙袋に入れた。
それを持って再び外に出た。
車の運転席の窓ガラスをコンコンと叩くと、阿川先生が窓を開けてくれた。
『これ、今日のお礼』
私は紙袋を差し出した。
「俺に?いいの?」
『うん』
「ありがとう」
阿川先生は笑顔で紙袋を受け取った。
『また明日、学校でね!』
「あぁ。遅刻すんなよ」
『阿川先生こそ』
私は阿川先生と笑い合った。
こんなに心から笑ったのは久しぶりだ。
阿川先生の車を見送って、家の中に入った。
笑えたってことは……もう、大丈夫だよね……。