私はトイレとお風呂以外は、ずっと部屋に閉じこもっていた。


ベッドにもたれたまま膝を抱えて座り、考えるのは先生のことばかり。


私はフラフラしながら立ち上がり、クローゼットから長方形のジュエリーケースを取り出した。


あの日から……。


封印してた箱。


私は箱を開ける。


中には8年前まで使っていた補聴器が入っている。


それまでは、話し方はゆっくりでも話をしていた。


でも7歳の時、小学校で“しゃべり方が変”とか“何言ってるのかわからない”と言われた。


それから私は、補聴器もしゃべる事も封印した。


8年間、音のない世界で生きてきた。


もし私が、しゃべる事を封印しなければ……。


もし私が、補聴器を封印しなければ……。


声を出して叫べてたかもしれない。


そしたらあの事件は防げたのかな……。


後悔だけだ頭を過る。


耳が聞こえないのが……。


声を出せなかったことが……。


悔しい――……。