私が中に入ったと同時に、椅子に座ってパソコンを使っていた保健室の阿川先生がこっちを向いた。



「おぉ!香月、どした?」


『用がなかったら来たらいけない?』


「そんなこと言ってないだろ。座ったら?」


『うん』



先生の名前は阿川咲哉(アガワ サクヤ)


私が唯一、名前を覚えた先生。


年齢は25歳だと教えてくれた。


スーツの上から白衣を着て、銀縁メガネをかけている。
ワックスでセットした無造作ヘア。
顔は童顔。
笑顔が可愛くて、高校生って言ってもおかしくないくらい。


私は、先生がパソコンを使っている机の傍にあった丸椅子に座った。


保健室は私にとって、学校の中で体育館裏の次に安らげる場所だった。