「あの頃の私は、どうかしてた……。瑞樹の優しさに甘えてたんだと、思う……」
泣きながら言う星羅。
何だよ今更……。
「私ね……。仕事始めたんだ……」
どうせ親父の会社か知り合いの会社にコネ入社したんだろ?
「瑞樹が自立しろって言ってくれたから……。
あのマンションも売ったの。
今は小さなアパートに住んでる。
家賃も生活費も自分で出してるんだよ。
夜遊びもしてないよ。
瑞樹との約束を守ったよ……。
だから、お願い……。
もう1度、私にチャンスをちょうだい?」
「そっか……。でもな星羅。もうチャンスはないんだ。1度失った信用を取り戻すことは出来ないんだよ……」
「…………だ……やだ、よ……。私は瑞樹が好き。瑞樹と別れて、初めて、瑞樹の大切さに、気付いたの……だから……お願い……」
星羅はそう言うと、俺に抱きついて来た。
ローズの香水が鼻を掠めた。